毎月1000人の肌を診てきて美容皮膚科の外来より相談のトップはなんとなく肌があれる「はい、次のかた、どうぞ…」東京・銀座にある私のクリニックの待合室は、診療日には幅広い年齢層の女性たちが訪れます。
肌を見られまいとうつむく人、しきりに手で顔を触る人…。
名前を呼ばれて診察室に入ってきたA子さんは制服姿のままで、会社をぬけ出してきた様子がうかがえました。
彼女は椅子に座るなり顔を指さして、「先生、肌が急にこんなになってしまったんです」と訴えます。
「こんなに?」一見なんのトラブルもなさそうな彼女の顔に近よってよく見てみると、確かにほおのあたり、ファンデーションの下の皮膚がかすかに赤みを帯び、小さなプツプツが数個できていました。
「これのこと?」と思わず確認したくなるような状態でも、当院において「たいしたことはない」というのは禁句。
患者さんにとってはたいしたこと、だからこそ、会社をぬけ出してまで診察を受けに来るのです。
彼女が気にしている赤みとプツプツについてさっそく問診がはじまります。
「いつからですか?」「一週間前から急になんです。
でも今までも時々こういうことはあったんです。
でもいつもはこんなにひどくならなくて、簡単に治っていたんですよ。
今度のは本当にどんどんひどくなって広がっちゃって、ぜんぜん治らなくて困っています。
化粧品は今までどおりのものを使っていて変えていません。
先生、これは何でしょうか。
なんで急にこんなになってしまったんでしょう」彼女はとにかく原因を知りたがりますが、これだけの情報ではこちらも答えようもありません。
そこでさらに質問を続けます。
「生活のリズムはどうですか」「同じです」「どう同じなんですか?」「今までと同じで、睡眠不足は食事は、忙しいのとひとり暮しなので、どうしても不規則です」「なにか急にストレスがふえるようなことはありませんでしたか?」「ストレスも慢性なんですよ。
とにかく仕事が忙しいので…」彼女は「慢性」という言葉を連発して説明します。
不摂生をしているのはいつもと同じなのに、なぜ急に、こんなことになったのか?と訴えているのです。
「慢性といってもねえ、積み重なって、だんだん肌にあらわれてくることはありますから」「アレルギーとかじゃないんですか」「アレルギーは皮膚科医が見ればだいたいわかりますが、あなたの場合はそういうかんじではないですね。
とくに病名のつくようなものではなく、肌あれですから」トラブルが「肌あれ」だとわかると、彼女の関心はなんとか早く治したいということに移ります。
「塗り薬とか、ないんですか」「ありますよ。
でも今のその生活を少しでも改善していただかないと、薬をやめるとまたでてきますよ。
いつまでも薬を塗り続けるわけにはいきませんしね」銀座に美容皮膚科を開いて四年ほどたちました。
オフィスやデパートに固まれた場所柄、近所で働くOLさんや販売員さん、ショッピングをかねて銀座を訪れる主婦のかた…今では月に一〇〇〇件におよぶ美容相談を受けるようになりました。
そのなかのほとんどを占める悩みは、このOLさんのような、ブツブツ、かゆい時折肌がかさつく、というようないわゆる「肌あれ」です。
肌トラブルの原因はなかなか見つからないこのような肌あれが起こったとき、ほとんどの方が自分なりに原因を考え、対処しようとします。
彼女たちの多くは、まず自分が使っている化粧品が悪いのではないかと思います。
原因が化粧品ではないとすれば、食べ物、ストレス、何かのアレルギーという流れで考えがおよぶようです。
しかし実際には、肌あれの原因はなかなか見つかりません。
なぜかというと肌というものは体内の活動のすべてを反映しているから。
すなわち原因は一つではなく、ストレスも胃腸の状態も生理のこともすべてが複雑にからみ合って、肌症状としてあらわれてくるからです。
それらのわずかなひずみは、一日にしてみると、たいしたことはないかもしれません。
しかし日々、少しずつ積み重なってあらわれてくるために、最近のことに原因を求めようとしても見つかりにくいし、A子さんのように不摂生が日常仁なっているような場合、肌あれと不摂生は関係ないと最初から思い込んでしまうのです。
顔は表に露出しているために、どうしても化粧品などの外のもの、直接肌に触れるものに原因を求めてしまいがちです。
しかし、たとえば植物だって主に隠れている根が丈夫でしっかりしていないと美しい花を咲かせることはできぎせん。
ここで植物の話を出すのは唐突かもしれませんが、肌も花と同様、肌を作り出す土台、すなわち体の状態が元気でなければ、健康と美しさを保つことはできないのです。
「美しさは健康から」というのは使い古された言葉ではありますが、その本当の意昧をどれだけの人が理解しているでしょうか。
お肌と体の関係はそれほど複雑でデリケートなのです。
A子さんのようなケースは、数力月後に塗り薬を使いきってまた来院することになるのがほとんど。
しかもこのような肌あれは、「あれる」「少し良くなる」という波を繰り返し、結局は悪化していくことが多いように思います。
不規則な生活が慢性化している以上、肌あれも慢性化していきます。
外から栄養や薬で治してもきちんと治しきることはできず、いずれは体内のアンバランスになっている部分を探りながら、中から治す助要がでてきます。
逆に言うと、いつも体の内側をバランスよく保っていられれば、肌はぐんと丈夫になり、トラブル知らずの美肌を維持できるのです。
いくら高額な化粧品を使おうと、いくら薬を使おうと、急場しのぎにしかすぎないこと、これを頭に入れてくたさい。
体の中に目を向けないかぎり本当の美肌は手に入らないのです。
ストレス社会に急増するおとなのニキビとアトピー肌あれに加え、多くなってきたのが、おとなの二キビとアトピーです。
二キビといえば思春期の中学生や高校生の悩みの定番で、たからこそ「青春のシンボル」ともいわれたもの。
アトピーも赤ちゃんから小学生までの患者さんが中心で、中学生になるころには自然に良くなることが多いものでした。
ところが最近、この時期をとうに週きたおとなになってから、急に二キビやアトピーになるケースがふえているようです。
ではトラブル知らずだった人の肌に、急に発疹があらわれるため、精神的にも動揺し、「どうして?」と患者さんの誰もが思います。
しかし二キビやアトピーは「診察などで原因を見つけ、それを排除すれば治る」という単純な経過をたどることはむしろ少なく、治療には長い時聞を要します。
実際、二キビやアトピーの原因は、皮膚科的にも不明な部分が多く、ニキビ=アクネ菌、アトピー=アレルギーと限定できるものではありません。
アクネ菌も私たちが生活している環境のそこらじゅうにじつはたくさんいますし、無菌室のなかにでもいないかぎり人の肌を診てきてもが絶えずそれらと接しているはずなのです。
それにもかかわらず二キビやアトピーになる人とならないですむ人がいるのは、やはり肌の免疫力の遣いでしょう。
免疫力とは体自身が持っている外界に対する抵抗力のこと。
二キビやアトピーになる患者さんの内臓機能を調べてみても、とくに異常は見つかりません。
ではこの免疫力が低下する原因はどのようなことなのでしょう。
肌に悩む方たちを診察してみると、西洋医学(現代医学〉的にはとくに異常は認められなくても、東洋医学的にみるとバランスの乱れがある場合が多いのです。
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